感染予防・対策から環境整備に関する専門的な知識・技能を有し、
多職種と連携し、指導的立場になる資格
医療環境管理士は、「医療現場で必要な感染予防対策」の知識・スキルを問う検定試験です。昨今、新型インフルエンザ、高齢化、耐性菌の増加などでリスクが高まっており、感染管理の体制作りや職員に対しての教育活動などが重要になります。資格取得の勉強によるスキルアップや、資格の肩書きを得ることで、専門家として指導的立場に立つことが期待されます。
医療環境管理士は、専門性の異なる職業・年齢・役職・施設規模など、様々な医療関係者で構成されています。医療環境管理士に期待される役割は、多職種・他施設の現状・取り組みを参考にし、様々な視点から医療現場を支援することです。

なぜ、薬剤耐性、感染予防の知識が必要なのか?

2015年5月のWHO(世界保健機関)総会で、薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プランを採択しました。
加盟各国は2年以内に薬剤耐性に関する国家行動計画策定が求められ、
政府は2016年4月5日に薬剤耐性アクションプランを公表しました。
国際社会でも大きな課題となっており、政府は抗菌薬の使用量を2020年に現在の3分の2へと減少させる数値目標を設定しました。 このことから、薬剤耐性や感染予防の知識は今後ますます必要になります。
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020(概要)
背景
1980年代以降、人に対する抗微生物薬の不適切な使用等を背景として、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌が増加

先進国における主な死因が感染症から非感染性疾患へと変化する中で、新たな抗微生物薬の開発は減少

国外においては、多剤耐性・超多剤耐性結核(抗酸菌)、耐性マラリア等が世界的に拡大

動物における薬剤耐性菌は動物分野の治療効果を減弱させるほか、畜産物等を介して人に感染する可能性


国際社会の動向
2015年5月の世界保健機関(WHO)総会で、薬剤耐性に関する国際行動計画が採択
→加盟各国に今後2年以内に自国の行動計画を策定するよう要請
2015年6月のエルマウ・サミットで、WHOの国際行動計画の策定を歓迎するとともに、人と動物等の保健衛生の一体的な推進 (ワンヘルス・アプローチ)の強化と新薬等の研究開発に取り組むことを確認

我が国の対応
2015年11月、「薬剤耐性(AMR)タスクフォース」を厚生労働省に設置
2015年12月、「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」の枠組みの下に、「薬剤耐性に関する検討調整会議」を設置

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン
概要
WHOの「薬剤耐性に関する国際行動計画」を踏まえ、関係省庁・関係機関等がワンヘルス・アプローチ※の視野に立ち、 協働して集中的に取り組むべき対策をまとめたもの
※ ワンヘルス・アプローチ
薬剤耐性対策においては、抗菌薬等の抗微生物薬は、医療、介護、獣医療、畜水産、農業などの現場で使用され、それらの使用により選択された薬剤耐性微生物や薬剤耐性の原因となる遺伝子が、食品や環境などを介してヒトへ伝播することが指摘されており、こうした分野で一体的な取組みが重要である。
計画期間
今後5年間(2016〜2020年)
構成
以下の6つの分野に関する「目標」や、その目標ごとに「戦略」及び「具体的な取組」等を盛り込む
分野 | 目標 |
---|---|
1.普及啓発・教育 | 国民の薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への教育・研修を推進する |
2.動向調査・監視 | 薬剤耐性及び抗微生物剤の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握する |
3.感染予防・管理 | 適切な感染予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止する |
4.抗微生物剤の適正使用 | 医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の適正な使用を推進する |
5.研究開発・創薬 | 薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進する |
6.国際協力 | 国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進する |

AMRに関する国内対策の更なる推進及びアジア地域等における主導的役割の発揮
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランのポイント(一部)
1.普及啓発・教育 |
---|
国民全体の薬剤耐性に関する教育活動を推進 薬剤耐性や抗微生物薬に関する国民の理解が現状では高くないため、教育活動を推進する ・抗微生物剤の適正使用:かぜ症候群の多くには抗菌薬は有効でない ・感染予防・管理:感染予防のためには咳エチケット・手洗いや予防接種が重要である ・ワンヘルス・アプローチ:薬剤耐性に取り組むためには、医療や獣医療、畜水産、食品衛生などの分野における一体的な取組が重要である |
専門職等に対する薬剤耐性に関する教育の推進により、薬剤耐性の発生・伝播を抑制する 薬剤耐性、感染予防・管理等に関する教育内容をカリキュラム、資格試験出題基準、研修プログラム等に導入する。対象は医療関係者だけでなく、介護福祉関係者、学生、医療機関で従事し、直接患者や患者の体液等と接する機会がある看護助手や医療事務員、清掃員等幅広い(下記参照) 【卒前教育】 「対象」 医療関係者※1、獣医療関係者※2、介護福祉関係者※3、農業・畜水産食品衛生に関連する職を目指す教育課程の学生 【国家資格試験】 「対象」 医療関係者、獣医師、介護福祉関係者に関連する職に関する国家試験受験者 【卒後初期教育・研修】 「対象」 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師及び医療関係者、医療関係者以外の機関で働く者※4 【生涯教育】 「対象」 医療関係者、医療関係者以外の医療機関で働く者、獣医療関係者、畜水産・農業関係者、自治体担当者 【専門教育】 「対象」 感染症に関する医療領域の団体、学会及び資格認定機関等による認定資格を有する者又は資格取得を目指す者 ※上記以外の医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師、獣医師 【普及啓発・教育体制の確保】 「対象」 医療関係者、獣医療関係者、介護福祉関係者、畜水産・農業・食品関係者、地方自治体職員等 |
3.感染予防・管理 |
医療、介護における感染予防・管理と地域連携の推進 近年では、高齢者施設等においても薬剤耐性微生物による感染症が問題となっている。 今後は、医療機関の入院部門はもちろんのこと外来部門、高齢者施設、在宅医療などの様々な臨床現場において感染予防・管理の連携体制を推進する |
※1 医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師、助産師、保健師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、管理栄養士等
※2 獣医師、動物看護職等
※3 社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、訪問介護員等
※4 医療機関で従事し、直接患者や患者の体液等と接する機会がある看護助手、健康運動指導士、診療情報管理士、医療事務員、リネンキーパー、清掃員、警備員等の職種
出典:厚生労働省 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016−2020一部改変
資格(医療環境管理士)のメリット


医療環境管理士に期待されている役割・業務の一例
- 経営者やICTメンバーとのコミュニケーション
- 感染症対策のシステム作り
- 多職種を交えた病院全体での研修活動
- 外部委託会社(清掃管理会社など)との連携
- 外部感染管理担当者との意見交換による情報収集
- 保健所との連携や感染症関連のWEBサイト活用
- 様々な視点から現場を支援、資格取得者同士で情報交換

推薦者

今日の感染制御活動は、各職種はもとより個人個人が注意を払わねばならない時代になってきた。 交通機関の発達、人的交流の活発化等に伴い、ある国で発生した感染症が全世界に瞬く間に広がりを見せる。
そこで、医療職関係ではICD(インフェクション・コントロールドクター)をはじめ、感染管理看護師(ICN)、感染制御専門薬剤師(ICPh)などが認定され活動がなされている。 しかし、前述したごとく、今や医療関係者のみならず、個人にいたるまで感染管理・廃棄物管理等の知識が必要である。ICD、ICN、ICPhの資格は誰もが取れるわけではない。
そこで、職種に関係なく資格取得にチャレンジできるのが「医療環境管理士」であり、感染制御活動の底辺を広げる意味でも本資格取得者の増加が望まれる。
各資格の違いについて
資格名 | 医療環境管理士 | 医療福祉環境 シニアアドバイザー |
医療福祉環境 |
---|---|---|---|
試験時間 | 120分 | 60分 | |
出題形式 | 選択式100問、記述式3問 | 選択式100問 | 認定基準 | 150点満点の7割前後 及び認定講習会修了 |
100点満点の7割前後 |
受験料 | 21,600円 | 16,200円 | 7,560円 |
合格率 (2015年度) |
約57% | 約75% | 約69% |
難易度 | ★★★★★(難しい) | ★★★(やや難しい) | ★★(やや易しい) |
受験資格 | どなたでも受験可能 | ||
主な分野 | 医療 | 医療、福祉・介護 | 医療、福祉・介護、一般 |
目指すレベル | 感染予防・対策から環境整備に関する専門的な知識・技能を有し、多職種と連携し、教育・指導ができる | 患者・利用者や従事者の感染リスク・メンタルケアについて理解し、教育・指導ができる | 感染症などの健康危機管理を医療福祉現場などで適切に実行できる |
こんな方に おすすめ |
適切な感染管理により薬剤耐性菌の拡大を阻止したい方 | 勤務先や上司に能力を資格として証明したい方 | 医療福祉系への進路を目指す学生の方 |
他の医療機関にラウンドをする方 | 感染予防の勉強会や講師をする方 | 感染症学習を始めたばかりの方 | |
感染管理の経験に肩書きをプラスしたい方 | 福祉介護分野の感染予防を担当している方 | 微生物の基礎、手洗いや消毒などの感染予防の基礎から知りたい方 | |
勉強会やセミナー講師をするにあたって専門家として評価されたい方 | 教育指導する際に自信を持ちたい方 | 資格をアピールして医療、福祉従事者からの信頼を得たい方 | |
医療機関へ情報提供をする医療情報担当者(MR)の方 | 医療福祉関連サービス業の管理者の方 | 医療機器などのメンテナンスのため病院や福祉施設に出入りする方 | |
院内清掃受託の管理をしている方 | ジカ熱やデング熱の発生により、これから感染症はより重要になると思っている方 | 病院や介護施設の清掃を担当している方 |